塗装工事の価格が大きく違ってくる8つの理由
外壁塗装や屋根塗装を行おうとして、業者ごとに見積額がバラバラであることに驚いた方は多いのではないでしょうか。またポッキリ価格やコミコミ価格などの一律の施工価格を提示する業者もあり、それが良いか悪いか困惑する方もいると思います。
そしてこの複雑さが塗装工事に対する疑問や心配を生じる理由となっています。
しかし塗装工事の価格が業者ごとに異なるのには理由があります。またそれは業者ごとの考え方や価格戦略の違いでもあります。ここではその理由を8つに分けて説明します。
見積もり調査の結果および見積もりの精度による違い
塗装工事を行う際に、塗装業者は建物の現状を把握するために実際の物件を見て見積もりを行います。この際に塗装業者によって見積もり結果に差が生じることがあります。
同じ見積額にならない理由は、塗装工事は目に見える部分だけではなく目に見えない部分にも作業が必要だからです。目に見えない部分をどこまで今回の作業に含めるかは業者の経験や技術力によって違ってきます。
技術力がないために余計な作業を見積もりに含めて高い見積もりになるということもありますし、この見積もり調査の段階で今回作業するべき部分を見抜けなかったり、いい加減な調査をしたりすると、数年後に大きな修繕費が必要になってしまう場合があります。
塗装工事は建物によって様々な状況と対応の選択肢がありますので、それを適切に判断することができるかどうかも業者の能力の違いであるといえます。
建物・立地条件などによる違い
建物の築年数と劣化度合いによる違い
建物は築年数が増えるごとに劣化していきます。劣化の度合いは建物ごとに異なりますが、一般家屋の場合概ね以下のような症状が発生します。
- 外壁にひび割れが発生している
- 外壁にカビや藻が付着している
- 下地の状態が悪化している
これらを放置して仕上げの塗装をしてもすぐに塗装が劣化してしまいますので、仕上げ塗装の前にこれらの修繕を行ってから塗装を行う必要があります。
軽微な劣化であれば修繕を必要とせず塗装だけで済むこともありますが、重度の劣化の場合は塗装前修繕に時間と追加費用がかかります。
劣化の度合いは建物によってまちまちですので、それに応じて見積もり額が変わります。
建物の形状による違い
塗装工事の見積もりは塗装面積によって変わります。同じ大きさの建物であっても、階数やデザインによって表面の面積が変わるため見積額が変化します。
また、建物の形状の違いは施工範囲にも影響を与えます。施工面積に影響を与えることもあれば、修繕の必要性や塗装の施工方法の違いなどが発生します。
立地条件および周辺環境による違い
建物の劣化の進行度合いは周辺環境によって大きく異なります。劣化が激しい場合は塗装前の高圧洗浄やひび割れの修繕などの外壁補修が必要となり、その費用が見積もり額を押し上げます。
- 日光による劣化
- 塗装は日光によって劣化します。日当たりの良い建物の塗装は劣化しやすくなります。
外装材などの建材も日光によって劣化しますので、建材の代わりに劣化を引き受けているのが塗装であるといえます。 - 日当たりの悪さによる劣化
- 他の建物に囲まれているなどで日当たりが悪いと雨による湿気がたまりやすく、外壁にカビや藻が発生しやすくなります。
- 風が強い
- 建物が風の吹き付けやすいところにあると、木の枝などが外壁にぶつかりやすく、ひび割れの被害を大きくしてしまいます。そのひび割れに風によって運ばれた砂埃がたまり水を蓄え、さらにひび割れが大きくなり、カビや藻が発生するなどします。
- 気候による劣化
- 雨が多い、台風が多い、雪が多いなどは塗装や外壁の劣化を早めます。
- 周囲の人工物による劣化
- 交通量の多い道路に面している、工業地帯に立地しているなどの場合は、化学物質や振動などの影響を受けることがあります。
外装材による違い
外装材の種類による違い
建物の外装材の違いによって使用する塗料が異なってきます。
また、外装材が違うと、補修が必要な場合の補修方法や下地処理方法も異なってきますので、塗装価格に影響します。
塗料や塗装色による違い
外壁に用いる塗料にも屋根に用いる塗料にも様々な種類があります。塗料の種類によって標準的な耐用年数が決まっており、一般的に耐用年数の長いものは塗料の値段が高くなります。
例えば、アクリル系の塗料は5年から6年といった耐用年数であるのに対し、無機系塗料は20年から25年の耐用年数を持ちます。
どの程度の耐用年数が良いかは状況によって異なります。
一般的に木造の民家、いわゆる一戸建ての木造家屋の寿命は50年程度と言われます。不動産の価値としては25年となります。外装材や屋根材そのものも劣化しますので、リフォームなどを含めた大掛かりな補修が必要になるタイミングを考慮しながら塗料の耐用年数を考えることになります。
塗装業者の技術力・業者間の関係による違い
塗装業者の技術力やノウハウの差による違い
塗装工事の見積もりを大きく変えるものとして人件費があります。施工費用を下げるために人件費の削減を図るのですが、その際に人件費単価を下げることがあります。これは具体的には経験の少ない未熟な職人を起用するということです。こういった職人ばかりで施工すると塗装の不具合が発生しやすくなります。
塗装は事前準備としてのひび割れなどの修繕が必要です。建物は一つ一つが違う環境と状態にあるので、どのような修理が必要かを判断するにも、修理を実際に行うにも、長年の経験と熟練の技術が必要となります。
しかし、全ての塗装箇所をベテランが施工しなければいけないわけでもないので、値段の高いベテランと値段の安い新人の職人をうまく混ぜて適材適所を実現する必要があります。これは見積もり調査や営業ノウハウまで含めた塗装業者の全体的な能力の差によって違いが出てくるものといえます。
業者間の関係による違い
塗装工事を行う業者には、大手メーカー、リフォーム業者、塗装業者など、お客様側から見ると様々な種類があります。大手メーカーやリフォーム業者が塗装業者に下請けに出すことも多いのですが、リフォーム業者が自社で塗装工事を行うこともあります。
塗装業者に直接発注するほうが常に安いのかというと、そうとも限りません。塗装工事にも建物の修繕が必要な場合がありますし、リフォーム工事と一緒に塗装工事をすることもあります。
塗装業に限らず建築業というのは各施工の専門性が高く技術力と経験が大切になります。その反面で各案件は建物の現況ごとに多様であり一種類の施工だけで完了するとは限りません。このような現実に対応するために、各業者が互いに結びつき互いの専門性を融通し合うような関係性となっています。
この関係が複雑であるために、客に分かりやすいというマーケティング上の戦略から「ポッキリ価格」や「コミコミ価格」などのワン・プライスを訴求している業者もあります。たしかにこれは分かりやすいのですが、お客様にとっての最適な施工はケース・バイ・ケースであるといえます。そのため建物ごとにオーダーメイドで見積もりをすることが大切であるといえます。